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東京地方裁判所 昭和47年(行ウ)20号 判決 1972年8月02日

千葉県松戸市小金原七丁目三五番地

原告

清瀬四郎

東京都千代田区霞が関三丁目一番一号

被告

国税不服審判所長

八田卯一郎

右指定代理人

宮北登

日隈永展

多賀谷恒八

泉類武夫

右当事者間の課税処分取消請求事件について、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  麹町税務署長がした相続税更正処分および過少申告加算税賦課決定処分に対する原告の審査請求について、被告が昭和四六年一〇月三〇日にした裁決を取り消す。

2  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

一  原告の請求原因

1  原告は、昭和四六年六月四日被告に対し、麹町税務署長がした相続税更正処分および過少申告加算税賦課決定処分に対する審査請求(以下、「本件審査請求」という。)をしたところ、被告は、同年一〇月三〇日、右審査請求が法定の審査請求期間経過後された不適法なものであるとしてこれを却下する旨の裁決(以下、「本件裁決」という。)をした。

2  しかしながら、本件審査請求は、法定の期間内にされたものであるから適法であり、これを却下した本件裁決は違法である。

3  よつて、被告に対し本件裁決の取消を求める。

二  請求原因に対する被告の認否

請求原因1の事実は認めるが、同2の点は争う。

三  被告の抗弁

1  原告の異議申立にもとづく麹町税務署長の異議決定書(以下、「本件異議決定書」という。)の謄本は、昭和四六年五月三日原告に到達した。

2  ところで、異議決定後の原処分に対する審査請求は、異議決定書の謄本の送達があつた日の翌日から起算して一月以内にしなければならないところ(国税通則法七七条二項)、原告は昭和四六年六月四日に至り被告に対し審査請求書を提出した。

3  したがつて、本件審査請求は、法定の期間経過後にされたものであり、かつ、期間内にしなかつたことについて天災その他やむを得ない理由があるとは認められなかつたから、被告は本件裁決でこれを却下したものである。

四  抗弁に対する原告の認否

抗弁1の事実は否認する。本件異議決定書謄本が原告に到達したのは昭和四六年五月四日または同月五日であつて、原告がこれを入手したのは同月五日である。

第三証拠

本件訴訟記録中の書証目録記載のとおりである。

理由

一  請求原因1の事実(本件裁決の存在)は、当事者間に争いがない。

二  そこで、まず、本件審査請求が法定の期間内にされたか否かについて判断する。

その方式および趣旨により公務員が職務上作成したものと認められるから真正な公文書と推定すべき乙第一号証および成立につき争いのない乙第四号証によれば、本件異議決定書の謄本は、昭和四六年五月三日に原告に送達されたことが認められ、この認定を左右するに足りる証拠はない。

ところで、国税通則法七七条二項によると、異議申立についての決定があつた場合における原処分に対する審査請求は、異議決定書の謄本の送達があつた日の翌日から起算して一月以内にしなければならないところ、原告が昭和四六年六月四日に至り本件審査請求をしたことは当事者間に争いがないから、本件審査請求が法定の期間経過後にされたことは明らかである。

また、成立につき争いのない乙第二号証によると、本件異議決定書の謄本は当初原告の家族によつて受領されたため、原告としてはその正確な送達日を知らなかつたこと、また、原告は、審査請求の理由の記載に日時を要し、かつ、昭和四六年六月二日および三日の両日は来客の応接等の用件が重なり多忙であつたことが疑われるが、右事実をもつて、「天災その他法定の期間内に不服申立をしなかつたことについてやむを得ない理由があるとき」(国税通則法七七条三項)に該当するものとは到底いい得ないばかりでなく、本件全証拠によつても右理由にあたる事実を認めることができない。

してみると、本件裁決には原告主張の違法事由はないといなほかなく、その取消を求める原告の請求は理由がない。

三  よつて、原告の請求は失当として棄却することとし、訴訟費用の負担について行訴法七条、民訴法八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 杉山克彦 裁判官 加藤和夫 裁判官 石川善則)

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